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RM307のエッセイ的なブログ★3

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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

金曜にこの一年で三度目となる瀬尾まいこの「幸福の音楽」を読んだ。
その後はこの作品を読み、今日の夕方に読み終わった。
以降は感想と覚書のようなモノ。ネタバレを含むのでご注意くださいませ。

長編というか中編だね。一気に書き上げられた感じがする。
やっぱり村上作品は読みやすいな。今作は特にその傾向が強い気がする。
年々本を読む速度が落ちているのだけど、ストレス無くするすると読めた。
くどい所がほとんど無く、比喩も今までの作品と比べると難しい表現が
少なかったからかな。「〜みたいに」「〜のように」で終わるわかりやすい
比喩が繰り返し使われていて、抑揚のようなモノが生まれていた。
それで何かどうなるのかはわからないのだけど・・・。
絵本的な丁寧さ、かな。ストーリーにも言えるけど、いつもだったら
放っておかれる(実際はそうされる事にも意味がある)謎や描写にも
きちんと説明がなされたり理由が語られていたりする所が多かったような。
物語は一つの謎、目的に向かって進んでいたけど、以前の似た種類の作品と
比べてわくわく感は少なかった。現実的で、地に足が着いていた感じ。
緑川の能力と死についての話ではわりと期待が高まったのだけれど・・・。
十六年前の謎、真相を探っていく・・・ミステリー小説のようだ。
緑川が読んでいた「害のないミステリー小説」というのは、もしかしたら
こういう小説だったのかもしれない、と想像してみたり。

焼き増しとは言わないけど、所々昔の作品と似た部分が散見された。
例えばシロの存在、その不安定さは直子を連想したし・・・他にもいくつか。
(「かわいそうな○○」という言い方みたいな細かい所は別にしても)
作品の雰囲気も「ここはこの作品に似ている」「この部分はここに〜」
みたいに感じる事が多かった。扱われているいくつかのテーマも。
つまらないとは感じないのだけど、少し型にはまっているようにも思えた。
”その作家らしさ”と型にはまる事は違うものね。上手く言えないけど。
シロといえば、生理を止める為に拒食症になったって部分は興味深かった。
あの彼女の他にもそういう発想をする女性が居るんだ。歳も同じぐらいかな。
嫉妬の本質についてのくだりは好きだな。なるほど、と思った。
そうだよね。鍵は自分の側にあるんだ。決心できない事が問題なのだ。
外国の描写も良いよな、といつも思う。空気感というか・・・何だろうな。
ヘルシンキの街で二人の少女がつくるに話しかけてくる所は和む。
何というか、以前は無かったマイルドさがあるな、と感じる場面が何箇所か。
それと259ページの「孤立の二重否定」のあたりが面白かった。
旅先でよくこういう事を考えるよね、あるある、みたいな。
旅人である時は、自分が普段孤立している事も問題無く受け入れてもらえる
ような気がするのだ。誰に?自分自身かな。
(ハアタイネン家を尋ねる所からラストまでは海へ行って読んだのだけど、
自分まで遠い地へ赴いたみたいで悪くなかった。
実際は近くにある田舎の海岸なんだけどね。休日でも誰一人居なかった。)
全編通して一番好きだったのはエリと話す場面。穏やかで、優しかった。
エリの話し方に好感を抱いた。昔の村上作品に登場したヒロインが
大人になって登場したように感じられた。
最後、切り捨てた側と切り捨てられた側が逆になったみたい。
つくるとエリはちょっと自己完結的にシロの事を決めつけている感じがした。
ううん、違う・・・何て言えばいいかわからないけど、それで良いのかな、
と思ったんだ。もう全ては過ぎ去って、考えても仕方の無い事だとしても。
成長した大人がそれまでの経験を元にして、匿名の感情に名前をつけて
満足するみたいに。ちょっと意味不明かもだけど。
つくるくんは沙羅さんと結婚する事ができたのだろうか。
ずっと独りなのだろうか。彼は沙羅が自分を選ばなかったら
死んでしまうかもしれないと言っていたけど、そうなのかな。
彼はその事実さえも受け止めて、これからも駅を作り続けていきそうな、
そんな予感がする。入れ物。少なくとも彼は入れ物にはなれた。
何にもなれない僕からすると、それはそれで羨ましい。
ここまで丁寧に手順を踏んで物事を明らかにしていったのなら、
水曜日の沙羅との会話まで書いて欲しかった・・・いや、読みたかった。
でもそれは望みすぎ、なのかな。


ざっと書いてあまり読み返していないので、あとから少し修正するかも。
総評(そんな大げさでえらそうなモノでは無いが)としては、
うん、それなりに面白かったと思う、という感想になるかな・・・。
自分の中で読み終わったばかりの作品は、その時のテンションも相まって
”その時点”での評価が高くなる傾向にある(と思う)のだけど、
この作品は高くはならないかな、と思った。読んでいて楽しかったけどね。
もしかしたら今の僕に元気が無さすぎる事が原因かもしれないけど・・・。
自分の中では「キャバレー」的な立ち位置になりそう。

でもやっぱりやっぱり、主人公とは全く異なる境遇で育った僕でも、
彼の痛みや寂寥感を共有できる、共感させられるっていうのはすごい、
村上さんの力、成せる技だよな・・・と感嘆する。
今、僕自身が一種の強い孤独感を持っていた所為か、つくるの心情に
「あてられた」感じもあって、読んでいてなかなか胸が痛んだ。
多かれ少なかれ、どんな人でも経験している孤独。冷たい痛み。
対人関係や他の何かで満たされている人よりも、独り苦しんでいる人の方が
この作品をより楽しめたのでは無いかと思うと、孤独もそんなに悪くない
ような気が・・・いや、やっぱり独りは寂しくて辛いね。
寂しくて寂しくて苦しいね!涙が出そうだったよ!辛いね!
今も寂しくて悲しいよ!・・・と、作品とは関係無いな。やめます。


ダンス・ダンス・ダンスノルウェイの森などを読んだ時のように
ココロが震える事は無かったけれど、予約して読んで良かったかな、と思う。
今日もいろいろと疲れました。終わり。